2012年1月27日金曜日

冤罪File-No.15



最新号がいよいよ明日、1月28日(土)発売です!





追加DNA鑑定はしない意向(東京高裁)


再審の是非の判断に移行

東京高裁は、これ以上の追加鑑定は行わないという意向を、弁護団、検察双方に伝えた。これにより、証拠調べを打ち切り、再審の可否を判断するものと見られる。

本ブログ既報の通り、昨年9月に開示された42点の新証拠(つまりこれまで検察が隠していた証拠)のうち15点の鑑定が今月までに終わっており、検察は正式鑑定書が出来上がるのを待って3月16日までに意見書を提出するとしている。
その後、残り27点の追加鑑定を行うか否か(弁護団は必要なしとしている)が当面の焦点だった。
讀賣新聞1月25日朝刊によれば、高裁はこの追加鑑定を行わない意向を、弁護団、検察双方に伝えたとされる。。
したがっていずれにしても3月19日の次回三者協議をもって証拠調べを打ち切り、再審を開始するか否かを決定する最終プロセスに入る可能性が強まった。

<文責・今井恭平>

三鷹事件の再審開始を求める集い

さる1月19日、「三鷹事件の再審開始を求める集い」が事件現場に近い武蔵野市吉祥寺の武蔵野公会堂で開かれ、約300名が参加した。

この日は、1967年の前日(1月18日)に竹内景助氏が無念の獄死をしてから45年目にあたる。
集会では高見澤昭治弁護団長が挨拶。また、再審請求の新証拠として
竹内氏の単独犯行が技術的に不可能であることを証明する専門家証言
アリバイの存在
目撃証言が警察に誘導されたものであること
などを明らかにしていく、と報告された。
また、この間、布川事件、狭山事件、袴田事件やゴビンダさん冤罪事件(東電OL事件)などの重要再審事件で、検察の隠していた証拠が開示されたことで大きな進展が得られていることを指摘。三鷹事件再審でも、検察の持っている証拠を積極的に開示させることを求めていく、と方針が示された。
弁護団の報告の後、映像作家の森達也氏(下山事件に取材した著書がある)が講演を行った。

<文責・今井恭平>

2012年1月26日木曜日

三鷹事件第2次再審請求


竹内氏獄死から44年

昨年(2011)11月10日、三鷹事件で唯一有罪(死刑)となった竹内景助氏の遺族が、再審請求を行い、東京高裁が受理した(担当は第4刑事部)。事件発生(1949年7月15日)から実に62年ぶりのことである。
10人の被告人の中で、なぜ竹内氏だけが有罪となったのか?米国による占領下の日本でおきた3大国鉄事件(他に、下山事件、松川事件)の中で、唯一死刑確定者を出した事件の真相はなんだったのか?
一旦は自白に追い込まれながら、無実を訴えて1931年に再審請求を起こした、竹内氏は、1967年に無念の獄死をした。今回の第2次請求は、その遺志をついで、44年ぶりにおこされたものとなる。

本誌最新号(15号)では、事件と再審請求について、詳細な記事を掲載したので、ぜひお読み頂きたい。

無実をだめ押しする追加DNA鑑定


袴田さん自身のDNAを鑑定


1月23日、静岡地裁で、袴田事件再審請求の三者協議(裁判所・弁護団・検察による非公開の協議)が行われた。この場で弁護団は、新たに追加鑑定として、袴田さんご本人のDNAを採取し、「5点の衣類」に付着しているB型(袴田さんもB型)血痕のDNAと比較することを申請。裁判所がこの鑑定を行うことを決定した。
先に明らかになった5点の衣類のねつ造だけでも再審開始決定には十分すぎる新証拠と言えるが、弁護団としてはだめ押しの追加鑑定によって、再審開始決定の内容をさらに確固としたものにするねらいがあると思われる。
今年3月10日で、袴田さんは76歳の誕生日を迎える。ご高齢の上に、心身ともに健康を著しくそこねておられる。鑑定も再審開始決定も、時間を一刻も無駄にせず、すみやかにすすめられなければならない。

<文責・今井恭平>

「5点の衣類」は、やはり警察によるねつ造だった!


袴田さんの無実を証明したDNA鑑定

発生(1966年6月30日)から半世紀近くを経過した袴田事件が、2011年12月22日をもって急展開する--本誌は14号でこう伝えた。犯行時に袴田氏が着用し、被害者の返り血を浴びたとされてきた「5点の衣類」のDNA鑑定が行われ、その結果がこの日に公表されるからである。
そして明らかになった鑑定結果は「5点の衣類は警察によるねつ造である」という弁護側主張を100%証明するものだった。
だが、新聞もテレビも、何故かこの重大な事実を正面から伝えようとしない。28日に発売となった本誌15号では、袴田さんの無実を証明したDNA鑑定の内容を徹底的に分析している。
是非、本誌を読み、袴田さんの無実はもはや、火を見るよりも明らかだという真実を知って頂きたい。

「5点の衣類」とは、袴田氏が犯行のときに着ていた衣服だとされ、それに付着している3種類の血液は、被害者の返り血と、袴田さん本人が犯行時に負傷した際の血痕だとされてきた。袴田事件最大の物証である。
だが、弁護団推薦鑑定人の鑑定結果によれば、5点の衣類からは、被害者とは異なる4名以上の血縁関係のない人たちのDNAが検出できた。これ以上に決定的なねつ造の証明はない。長年の論争に最終的に決着がついたのだ。
そもそもこの衣類は、事件から1年2ヶ月も経過してから、徹底的に現場検証されていた味噌工場のタンクの中から発見されたという経緯自体が、大きな疑惑を呼ぶものだった。
一方、検察推薦の鑑定人は、鑑定に失敗してしまった。そして、かわりにミトコンドリアDNA鑑定という、より識別力の弱い方法のみを行い(それも実は不完全なもの)その一部分から混合DNAが検出された。それをとらえて、検察は袴田氏の血痕が付着している可能性も排除できないなどと主張する。そして、その尻馬に乗った一部マスコミが、(弁護側、検察側)両鑑定結果が分かれた、などと書いている。だが、5点の衣類から被害者のDNAが全く検出されず、他人の血痕であったことが判明したという動かせない事実の重みが何を意味するのか、報じていないのはどういう訳なのか?この事件の争点自体をまったく理解していないとしか考えられない。

本誌15号の記事では、検察推薦鑑定人の鑑定がいかに鑑定の名にも値しないお粗末なものであるか、無責任で不誠実なものであるのか、専門家による検証も踏まえて詳述した。
DNA鑑定という一見素人には難しくて理解できそうにない、と思えるものも、けっして目をそらすことなく自分自身で理解しなくては、嘘だらけの検察のデマゴギーに惑わされるばかりだ。

<文責・今井恭平>

寒中お見舞い申し上げます



ホームページのリニューアルにともない、
今後は旬の話題をリアルタイムでお伝えできる機会も増えることと存じます。
これからも「冤罪File」をどうぞよろしくお願いいたします。

さて、まずは嬉しいニュースです。

「冤罪File」第12号でもご紹介しました
冤罪「布川事件」のドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」が、
第66回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞を受賞しました!

昨年末にはドバイ国際映画祭において
ヒューマン・ライツ・フィルム・ネットワーク賞を受賞するなど、
国内外で高い評価を受けています。

ぜひ多くの方々にご鑑賞いただきたい作品。

トップぺージの動画コーナーにて予告編がご覧になれます。

今後各地での上映予定など詳細は下記URLから・・・。
http://shojitakao.com/




2012年1月25日水曜日

1月24日 三者協議


またしても検察の引き延ばし策

1月24日午後5時より、東京高裁でゴビンダさん再審請求審の三者協議(高裁第4刑事部、東京高検、弁護団による非公開の協議)が開かれた。だが30分後には弁護団が記者会見場に姿を見せ、三者協議はわずかの時間で終了したことが分かった。


弁護団によれば、検察は昨年9月から開始した15点の追加DNA鑑定の正式の鑑定書が出来上がるのが2月末となるため、それが出来たあとで意見書を作成する、それには3月16日までかかると主張したという。そこで、裁判所はそれを待って3月19日に次回の三者協議を開くことを決め、それだけで24日の協議は実質的に何の進展もなく終了したようである。
正式の鑑定書が出来上がっていないとはいえ、すでに各資料の鑑定結果はその都度あきらかにされており、弁護団は即座に再審請求補充書を何通も作成し、意見を表明している。もはやこれ以上の事実審理の必要はなく、ただちに再審開始を決定すべき時期にきているのは明白だ。検察はまたしても鑑定書が完成していないことを理由に時間の徒な引き延ばしを謀っていると指弾されても仕方ない。
さらに残り27点の追加鑑定などを主張する可能性もある、と報じられているが、到底許されることではない。
支援団体の無実のゴビンダさんを支える会には、ネパールのご家族からこの日もすぐに電話があり、協議の結果を期待と不安を胸に待っていたことが伺われる。
次々と無罪証拠が明らかになっているにもかかわらず、再審がなかなか決定されないことは、ご家族には理解不能なことだろう。われわれ一般市民の感覚からしても、理解に苦しむことである。

文責・今井恭平

真犯人Xの浮上

検察が14年間隠していた証拠から、真犯人像が浮かび上がった!

昨年7月23日付けの鈴木鑑定によって、従来は存在が知られていなかった人物Xの存在が浮上。この男性は被害者の体内に自分の精液を、そして事件現場のK荘101号室に体毛を残していた。
しかも昨年9月2日、検察(東京高検)は、これまで隠していた証拠がさらにあったことを明かした。ことに重要なのは、それらの中に、被害者の身体の表面(胸や口周辺など)に唾液が付着しており、その血液型がO型だという鑑定書が含まれていたことだ。(ゴビンダさんはB型だから、DNA鑑定をする以前の問題として、これは別人のものだ)その上、そのことは事件直後の1997年4月3日には判明していたことが分かった。(O型唾液が付着していた、という鑑定書の日付が同日)つまり、別人の唾液が被害者の身体に付着していた、という重要な無罪方向の証拠を隠した上で、逮捕、起訴していたということなのだ。これは、無実の人を意図的に有罪にしようとした意図的な犯罪行為としか言いようがないものだ。

さらに、11月1日には、このO型唾液のDNA型も、Xと一致したことが判明。Xが真犯人である蓋然性はさらに高まった。
支援団体「無実のゴビンダさんを支える会」や国民救援会等が主張している通り、もはや再審を開始する要件は完全に整っている。そして、無実の人が無期刑に服しているという異常な事態が継続していることが明らかであり、東京高裁はただちに事実審理を打ち切って再審開始決定を出すべきだし、当然ゴビンダさんの身柄も、刑の執行停止によって自由にすべきだろう。

文責・今井恭平

鈴木DNA鑑定は、再審開始を決定づける明白な証拠


7月23日に東京高裁に提出されたDNA鑑定書(鈴木廣一・大阪医大教授作成)によって何が明らかになったのか。なぜ、それはゴビンダさん無罪の決定的な証拠と言えるのか。

◆前提となる事実(一二審の判決構造)
それを理解するためには、まず東電OL殺人事件で何が争点となったのか、何が一審の無罪と控訴審の有罪という結論を分けたのかをあらためて確認しておくことが必要だ。
一審無罪判決の要点 

  • コンドームは事件当夜に投棄されたものとは言い切れない。
  • 被害者の死体付近に、被告人及び被害者以外の者の陰毛が2本落ちていた。
  • 第三者が101号室に人って本件犯行に及んだ疑いが払拭しきれない。
  • 巣鴨の定期入れ(ゴビンダさんに土地勘のない場所に被害者の遺留品があった)
  • 被害者による101号室独自使用の可能性を否定しきれない。


以上から、情況証拠はいずれも反対解釈の余地があり(有罪とも無罪とも言い切れない)「被告人を犯人とするには合理的疑いが残る」

控訴審逆転有罪の要点 

  1. 現場に遺留されたB型陰毛2本のうちの1本のミトコンドリアDNAが被告人と一致
  2. 現場のトイレに遺棄されたコンドーム内の精液のDNA型が被告人と一致
  3. このコンドーム内の精液は遺棄されてから10日と考えても押尾鑑定結果と矛盾しない
  4. 事件前の2月下旬~3月2日ころまでに被害者と101号室で買春したとの弁明は、被害者の手帳記載(きわめて正確)と照らして信用できない。
  5. S田の目撃証言は信用性が高い。
  6. 3月8日に被告人が101号室に行くことは時間的にも可能
  7. 他方、被告人の言うとおリに、本件犯行が行われる以前から、K荘101号室 の出入口の施錠がされないままになっていたとしても、右アパートに係わりのない被害者が、同室が空室であり、しかも施錠されていないと知って、売春客を連れ込み、あるいは、被告人以外の男性が被害者を右の部屋に連れ込むことは、およそ考え難い事態であること。


最も重要なのは7.であり、他は補完的証拠に過ぎない。

◆鈴木鑑定で判明した事実

被害者の膣内の残留精液(血液型O型)のDNA型は、被害者が最後に一緒にいた馴染み客A氏のものとは一致しない。この型をもつ人物は従来はまったく未知の第三者である。
101号室のカーペット上に残されていた陰毛のうち、1本のDNA型が、この未知の人物X氏のDNA型と一致した。
室内の他の2本の陰毛から、被害者とX氏のDNA型が混合した型が検出された。

ここから分かること
●被害者はゴビンダさんでもA氏でもない未知のXと、101号室内で関係をもった。
●すなわち、控訴審有罪判決の大前提である
「被告人以外の男性が被害者を右の部屋に連れ込むことは、およそ考え難い事態である」
が完全に(推測ではなく)物証によって否定された。
したがって、被告人に無罪を言い渡すべき証拠が新たに発見された場合に相当し、刑訴法435条⑥にいう再審開始事由が満たされたことになる。したがって刑訴法448条第1項にもとづき、東京高裁は再審を開始しなければならない。

註 被害者の血液型はO型、ゴビンダさんはB型。被害者と夜7時から10時ころまで一緒にいた客のA氏もO型。 (殺害時刻は深夜0時前後ころ)


<文責・今井恭平>

ゴビンダさん無実の新たな証拠

新DNA鑑定をめぐる経緯

ゴビンダさんの無罪をより確定的に証明するDNA証拠が明らかになったのは、昨年7月のこと。それ以降の経緯を、まず時間軸にそって整理しておこう。

●2011年 7月21日
讀賣新聞のスクープ(朝刊1面と社会面トップ)
「東電OL殺害 再審可能性」 その後、テレビや各紙夕刊が一斉に報道。
検察は、情報漏れについて何の釈明もないまま、鑑定結果が「再審開始事由にならない」等の非公式コメントをメディアに流し始める。
●7月25日
午後5時、検察が鑑定書を弁護団に開示。鑑定書の日付は7月23日。つまり鑑定書が出来上がる前に、内容の一部がリークされたことになる。
●7月26日
弁護団が鑑定書を証拠申請し「再審請求補充書(8)」を東京高裁に提出。「本日付で提出した鈴木廣一作成の鑑定書は、請求人(ゴビンダさん)に無罪を言い渡すべき明かな新証拠です」として「速やかに再審開始が決定されるべき」と申し立てた。
夕方、司法記者クラブで記者会見した弁護団は、検察に対し、刑の執行停止(釈放)を申し入れたこと、また、法廷外で新証拠の証拠価値に関わるコメントを行っていることに厳重に抗議した、と明らかにした。
●8月4日
支える会と日本国民救援会、東京高検に対する要請行動--「再審の開始を遅れさせる行為は一切しないこと」「ゴビンダさんを直ちに釈放すること」の2点を申し入れ。
●8月10日
裁判所・弁護団・検察の三者協議。検察は、鑑定書を認めるか争うかについて無回答。回答時期についても「今は返答できない」。裁判所は回答時期を一週間以内に明らかにするように要求。→ 後に検察は9月16日までに意見を表明すると回答。
無実のゴビンダさんを支える会と日本国民救援会が高裁に要請行動--「直ちに再審開始を決定し、刑の執行を停止すること」
●9月2日
検察が、さらに42点の証拠を開示し、それらのDNA鑑定を行いたいとの意向を裁判所と弁護団に伝える。→ 弁護団には証拠の一覧表のみ開示
●9月8日
上記42点のうち、被害者の胸部や口に付着していた唾液からO型反応が出たが、B型反応は出なかったという鑑定書を含む証拠が開示される。
この鑑定書の日付は、1997年4月3日。つまり、強盗殺人での逮捕前(別件・オーバーステイのみでの逮捕時)には、被害者の身体から別人の体液が発見されていることが判明していたことになる。
●9月9日
急遽、三者協議が開かれ、弁護団は鈴木鑑定以降にもさらに隠されていた証拠があったことに怒りを表明。これらの証拠のDNA鑑定については今後慎重に検討する、とする。
その後、一部のDNA鑑定について弁護団も同意。42点のうちの15点を3グループに分け、鑑定が先行して行われることとなる。
無実のゴビンダさんを支える会、新たに発覚した証拠隠しに対して抗議声明を公表。
●9月12日
弁護団、唾液に関する新開示鑑定を追加で証拠申請する。
●10月21日
被害者の遺体(右乳房と下半身2箇所)に付着していたO型唾液と膣内残留精液(X)のDNA型の一致が判明。
●11月2日
上記を弁護団が証拠申請。
●11月22日
第2グループの内、被害者の首周辺等のDNA型は検出不能と判明。
●12月27日 本年最後の三者協議。第3グループの6つの鑑定試料のうち、5つまで鑑定終了。有意な結果なし。残り1点は鑑定中。今年1月24日に三者協議。
●2012年 1月20日
讀賣新聞等の報道で、昨年末に1点残っていた鑑定試料(被害者の下着)からもゴビンダさんのDNAは検出されなかったことが判明。
●1月24日 三者協議
15点の追加鑑定の正式な鑑定書が出来上がるのが2月末になる、という理由で、検察は意見書提出を3月16日まで引き延ばし。その後19日に三者協議がもたれる。弁護団は鑑定結果が出るつど、再審請求補充書を提出しており、検察のこの時間稼ぎは許されるものではない。
3月19日の三者協議で東京高裁が事実調べの打ち切りを決定し、ただちに再審開始決定を作成するプロセスに入ることが問われている。

<文責・今井恭平>