2012年12月13日木曜日

舞鶴女子高生殺害事件 中勝美氏に逆転無罪(大阪高裁)

 2008年5月7日に発生した「舞鶴女子高生殺害事件」の控訴審判決が12月12日、大阪高裁で行われた。川合昌幸裁判長は中勝美氏(64歳)に無罪の判決を言い渡した。2011年5月18日に京都地裁(笹野明義裁判長)が下した無期懲役の有罪判決を破棄したものである。
『冤罪File』、は第13号(2011年7月号)でこの事件を詳報し、検察は被告人の有罪立証に完全に失敗した、有罪根拠は何一つ存在しないと指摘、無罪であるべきだと主張した。しかし一審は、変遷を繰り返しているばかりか、明らかに警察によってバイアスをかけられた目撃証言や、捜査当局の誘導の痕跡の明かな被告人の供述だけを根拠に、有罪としてしまった。
 控訴審判決は、これらの有罪根拠をいずれも「経験則、論理則に照らして合理的とはいいがたい」としりぞけ、無罪とした。
 これらの事実認定は、直接証拠が存在しない中で、あいまいな目撃証言や誘導された供述の問題点を指摘しており、納得のいく判決である。
 ことに、検察官による取調べの実態について突っ込んだ考察を行い、供述が誘導されうる情況であったことを指摘している点は注目に値する。これまで密室の取調室で繰り返されてきた冤罪製造(供述調書のでっち上げ)の教訓を汲み取り、捜査当局に反省を迫るものとなっている。
 また一審無罪(裁判員)--控訴審逆転有罪(小倉正三裁判長)を、最高裁が再度逆転無罪とした2月13日の画期的判決で示された、安易な有罪認定に歯止めをかける基準(経験則・論理則違反の具体的提示)を踏襲している点でも評価できる。
 だが一方、マスコミの多くが、相変わらず「無罪で悔しい」という被害者遺族の声をたんにそのまま伝達するにとどまり、冤罪を防止していこうとする流れに目を向けない報道を続けていることに失望を禁じ得ない。足利、布川、福井、東住吉、東電OLと、連続する重大事件の再審の流れを直視するなら、たんに被告人、被害者双方の声を等しく伝えました、などという従来通りの安易な報道でお茶を濁すことは出来ない筈である。
(今井恭平)